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国内で初めて漆塗りの「表彰楯」を発案するなど、表彰用品の製造販売を中心に半世紀以上の歴史を持つ関美工堂。同社の代表として、伝統工芸の会津塗を用いた新しいスタイルの漆器を次々にプロデュースしているのが関昌邦さんです。
18歳で上京し、宇宙開発事業に携わりながらサラリーマン生活を送っていた関さんに転機が訪れたのは、30代半ば。十代の頃、地元を離れたい一心で飛び出した会津に戻り、それまで気づかなかった郷里の奥深さに触れたことがきっかけでした。地元の人たちと酒を酌み交わしながら、職人が集って脈々と伝統技術を伝えて来た会津の豊かさを知り、東山温泉の宿では、漆の飯碗で出されたご飯の思いがけない美味しさに、眠っていた遺伝子が目覚めるような衝撃を覚えたと言います。
土があって、作物があり、地球の息づかいを肌で感じる。そういう場所で暮らしていないと、思考まで機械的になってしまう————。東京での生活で失っていた「土着」の感覚を取り戻す中で、会津というコミュニティを基盤に、地域に貢献しながらものづくりをしていこうと、2007年、祖父の代から続く関美工堂を引き継いだのです。
同社のもう一つの事業の柱が、市内で営むライフスタイルショップ「b Prese(ビープレゼ)」。東京時代に、多くの一流インテリアショップに通って養った目を生かし、デザインや製法にこだわった国内外の上質なアイテムを紹介すると、遠くからも顧客が訪れるようになりました。
一方で力を注いでいるのが、地場産業である会津塗の活性化です。寒暖の差が大きい内陸の気候に育まれた会津漆器は、普段の暮らしの中で使える堅牢さと美しさを併せ持つことが特徴です。その魅力をより多くの人に伝えるために、2006年、同業の数社と力を合わせて会津塗の新ブランド「BITOWA」を立ち上げました。
関美工堂のオリジナルである本漆の「ノダテマグ」や、蒔絵を施したiPhoneケース「CAVRE」なども、会津の職人の手で生み出されたもの。「扱いがむずかしい」と敬遠されがちな漆器を、現代の生活の中で気軽に楽しめるものにしたいと、アウトドアで使える新しいシリーズの開発にも余念がありません。
関さんたちのものづくりの姿勢に共感した、会津に活動拠点を置く外資系企業からは、復興を象徴する「金継ぎ」の意匠をあしらった自社バージョンの漆塗りiPhoneケースのオーダーを数百単位で受注。世界に評価される伝統工芸を目指し、着実に歩みを進めています。